古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『がんの痛みを癒す 告知・ホスピス・緩和ケア』高宮有介(小学館、1996年)



がんの痛みを癒す―告知・ホスピス・緩和ケア

 最近はがんの告知を受ける人が増えてきているせいか、ホスピス、緩和ケアなどという言葉が行き交うようになりました。本書は、末期がん患者の痛みをモルヒネを使用することによって最小限に押さえ、その患者の余命いく月かのあいだに望む事をさせて、人間らしい最期を迎えさせる大学病院の緩和ケアの4年間にわたる患者と医師たちの人間ドラマともいえる感動のノンフィクションです。登場する患者は6歳から70代まで男女さまざまです。38歳の女性は悪性黒色種で3か月の余命を宣告されるが、一人息子のために体が許す限り仕事をし、最期まで周囲の人々との交流を大事にしながら大晦日に亡くなります。また70代でお酒の好きな男性は最期の数日前まで酒を飲み続けます。もちろんタバコやペットもOKです。「常識を破れ」を合い言葉に、残された時間のクオリティ・オブ・ライフ(生命の質、生活の質)を支えるスタッフの真摯な生き方が、患者やその家族への癒しに繋がっていく様子が読者の胸を打つことと思います。今後の終末医療への提言を含め、人生の最終章を実り豊かに生きるための必読書として、男女・年代に関係なく読むことができます。