古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

青木寿幸、井岡亮、佐野洋子、P・F・ドラッカー


 1冊挫折、2冊読了。


 挫折24最新投資組合の基本と仕組みがよ〜くわかる本』青木寿幸、井岡亮(秀和システム、2008年)/「自分にはお金がなくとも、ファンド(投資組合)を作って、他人のお金を集めれば、誰でももうけることができます」(「はじめに」)――いやはや驚いた。青木は公認会計士と税理士の肩書を持ち、井岡はコンサルタントとなっている。よくもまあ、こんなことが書けたものだ。“ものを書く姿勢”が全くなっていない。出版社の見識を疑う。30ページでやめる。


 54冊目『100万回生きたねこ佐野洋子講談社、1977年)/有名な絵本。広井良典著『死生観を問いなおす』(ちくま新書、2001年)で紹介されていた一冊。面白かった。六道輪廻からの解脱を思わせる。しかしながら、主人公のねこが初めて知った自由や愛情は、仏教だと愛欲の範疇(はんちゅう)となる。ここに佐野のひとひねりがある。難点は、児童向けでありながら読点ではなくカンマを使用しているところ。これは頂けない。初めて佐野作品を読んだが、絵もいい。


 55冊目『「経済人」の終わり』P・F・ドラッカー/上田惇生訳(ダイヤモンド社、2007年)/初版が刊行されたのは1939年(昭和14年)である。日本では岩根忠訳で東洋経済新報社から1958年に発行されている。書き始めたのが1933年(昭和8年)というから、ドラッカーが23歳の時のこと。難解だった。多分、訳もよくないのだろう。それでも、所々に箴言のようなキラメキがある。どこを読んでも第二次世界大戦前に書かれたものとは思えない。その意味では、未来を予言した書と言っていいだろう。ファシズムを政治・経済から読み解き、徹底してマルクス主義を批判している。知性の力を思い知らされる。今こそ読まれるべき作品だと思う。