古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ロベール・ドリエージュ、スタンレー・ミルグラム


 2冊読了。


 33冊目『ガンジーの実像』ロベール・ドリエージュ/今枝由郎訳(白水社文庫クセジュ、2002年)/アンベードカルの本しか読んでなかったので、平等を期すために読んた。ガンジーという偶像を破壊するには十分な内容。前半はガンジーの生涯で、後半は思想についてまとめられている。紙数が足りないせいか、アウトラインをなぞったような代物だが、コンパクトでわかりやすい。ただし、ガンジーの思想については、ヒンドゥー教の改革者であることはわかったが、思想の中味がよくわからなかった。アンベードカルにも少し触れているが、分離選挙に関して踏み込んだ考察は皆無。文庫クセジュは紙質が悪い。


 34冊目『服従の心理スタンレー・ミルグラム山形浩生訳(河出書房新書、2008年)/昨年の11月に刊行された新訳。山形浩生とは相性が悪いので恐る恐る読んだ。多分、原文が優れているのだろう。すんなりと読めた。初めてのことである。気になったのは「真逆」くらいか。言葉のセンスを疑う。それと、「蛇足」と題された文章が見事な蛇足となっている。本書の内容は文句なし。これほど面白いとは思わなかった。ミルグラム服従実験は多くの著作で引用されているが、結論部分を引っ張り出しただけのものであることがわかった。それにしても、ミルグラムのアイディアは恐ろしいほどだ。様々な実験パターンを用意して、服従心理のメカニズムを明らかにしている。被験者との生々しいやり取りも緊迫感に満ちている。まるで、映画の台本のようだ。尚、300ページ余りで3200円という値段は高いが、これは紙質が良いため。河出書房新社の意気込みが窺える。