古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

噴水のように噴き上がる怒り/『北の大地に燃ゆ 農村ユートピアに賭けた太田寛一』島一春

 ・噴水のように噴き上がる怒り

『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一


 島一春はこの一冊しか読んだことがないが、人間味を鮮やかに捉える筆致が忘れ難い。太田寛一は農協運動に身を捧げた人物。

「もっと辛辣で、もっとあくどい業者だっているんだよ。それを思うと、血が騒ぐというか、怒りが胸の底から噴水みたいに噴きあがってくるんだ」

【『北の大地に燃ゆ 農村ユートピアに賭けた太田寛一』島一春(第三文明レグルス文庫、1986年)】


 先日、30代のお母さんから娘がイジメに遭っているようだと聞かされた。話し振りからは、まだ深刻さが窺えなかった。呑気な母親だった。私は矢継ぎ早にアドバイスした。「まず実態を知ることだ」「子供が話したがらないようなら、無理に聞くことはない」「子供の友人にも尋ねてみる」「子供からのサインを絶対に見逃すな」「クラス替えが不可能であれば、転校も考えるべきだ」「最終的には“逃げる”か“戦う”かしかない」「相手の子供を殺すつもりで脅すのも手だ」などなど。


 それからというもの、この子供のことが頭から離れない。私の心の真ん中に重石が置かれてしまった。今日もじっと涙をこらえているかも知れない。そして、心の傷口を広げながらもたった一人で孤独に耐えているのだ。


 加害児童は母親から虐待されているようだという。だからといって、許される問題ではない。私に依頼があれば、あっと言う間に解決してみせる。その時はどんな卑劣な手段も辞さないだろう。