古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

団鬼六


 1冊読了。


 9冊目『真剣師 小池重明団鬼六/ハードカバー(イースト・プレス、1995年)には、「“新宿の殺し屋”と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯」という副題がついている。表紙の写真は不敵この上なく、相手をひたと見つめている。賭け将棋以外には興味を示さなかったため、アマ名人のタイトルを取るのが遅れたという。遂にはプロを打ち負かす一方で、酒と女に溺れ破滅的な人生を歩んだ。享年44歳。団鬼六の文章がいい。実際に小池重明(じゅうめい)の生活の面倒を見、何度も突き放そうとするのだが、団は小池を憎むことができない。そんな感情の揺れが実に好ましい余韻を奏でている。