オバマ大統領の誕生で対日圧力がますます強くなると予想される中、米国が毎年秋に日本に突きつけてくる「年次改革要望書」09年版の内容が明らかになった。
この文書はいわば日本政府への“指令書”で、自民党政権は93年以降、その要求をほとんど丸のみしてきた経緯がある。小泉元首相の「郵政民営化」をはじめ、耐震偽装の元凶となった「建築基準法改正」、大量のワーキングプアを生んだ「労働者派遣法改正」も、もとはこの文書に書かれていた米国側の要望だ。
米政府の狙いは日本市場の開放にある。先月15日に出された09年版の中身について、独協大教授で経済評論家の森永卓郎氏がこう言う。
「今回の要望書で、米国が日本の消費者を標的にしていることがハッキリしました。その象徴が確定拠出年金、つまり私的年金制度の拡大です。米国は日本の年金制度崩壊を見込んで、年金分野に参入しようとしています。また、個人の金融信用度を示す得点『クレジットスコア』を金融機関に導入させようとしていて、消費者金融への進出も考えているようです」
米国のデタラメな対日要求はそれだけではない。
国際政治学者の浜田和幸氏はこう指摘する。
「まずは医療業界の開放です。新薬承認や医療機器導入の規制を緩和し、米医薬メーカーが参入しやすくなるよう迫っています。さらに農業分野では、遺伝子組み換え食品を導入するための制度改定、残留農薬や食品添加物の検査の緩和を求めている。ほかにも、NTTやドコモを分割して通信の競争促進を迫ったり、民営化後の日本郵政にはさらなるリスクを取るよう要求している。経済の立て直しが急務のオバマ大統領が、圧力を強めてくるのは間違いありません」
麻生首相は「新しい大統領と日米関係を維持する」とか言っていたが、結局、また米国にむしり取られることになる。
【日刊ゲンダイ 2008-11-08】