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- CIA局員の表向きの肩書きは大使館員、広告・出版関係者
私が子供の時分からスパイに憧れていたのは、テレビアニメ「スーパースリー」の影響かも知れない。当時はまだ「諜報部員」と称していた。
中年おやじになった今、振り返ってみると「仮面ライダー」「鉄人28号」「巨人の星」などは、広義の意味で“スパイもの”と言っていいだろう。いずれも、ある目的のために人生の大半を犠牲にし、その犠牲を超克することで強い意志を発揮して、正義を実現する内容となっている。
多分、そういう国民像が望まれていたのだろう。つまり、兵隊。
スパイはカメレオンでもある。徹底して身分を秘匿し、その時その時の役回りを演じる。観客は上司一人。演出者は国家。
ただし、現在でもCIA局員の表向きの肩書きは大使館員以外では広告関係や出版関係の会社の従業員というものが多いので不思議はない。
当時からCIAは国費を使って世界各国の新聞社や広告会社を買収し、運営していた。かくしてCIA局員はこれらの会社を隠れ蓑として、会社の従業員という肩書きで活動しているのだ。
【『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫(新潮社、2006年)】
そうだったのか。すると、先日我が家を訪れた新聞拡張員もCIAの手先であった可能性がある。
スパイへの憧れは、ジョン・ル・カレやフリーマントルを読むようになって色褪せていった。二重スパイ、三重スパイとなると、何がなんだかわからなくなる。米ソの冷戦構造によって諜報戦は本格化したが、自分の手であるスパイによって首を絞められるような場面もあったってこどだな。
情報には精度と付加価値が求められる。そのため、本格的な情報は等価交換される。こっちの手の内をさらした分だけ、向こうも情報を差し出してくれる。だったら最初っから、全部話してしまえばいいだろうよ。すると、世界は一瞬にして平和となる。
そうはならない世界の現状を鑑みると、複雑な状態を維持したい指導者の意向が窺える。奴等の好物は、貧富の格差、テロ、薬物依存、犯罪、人種差別といった類いのものだ。混乱した世界が望ましいのだ。
日本テレビを創設した正力松太郎を、CIAが全面的にバックアップしていた。暗号名は「ポダム」。戦後のドサクサに紛れて、日本社会の中枢に食い込むことなど、アメリカにとってはわけもなかったことだろう。そして今、我々はアメリカによって、どこをどうコントロールされているのかも自覚できなくなっているのだ。だから取り敢えず、アメリカを嫌っておくことにしよう。