古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

大臣も次官も逃げた汚染米の闇の深さ

「国家的詐欺だ」の声も


 汚染米問題の責任を取る形で、19日、太田農相が辞任、白須敏朗事務次官が更迭された。2人のクビを切ることで、この問題の「幕引き」を狙っているのは歴然だが、冗談じゃない。
 新聞はあまり報じていないが、三笠フーズら悪徳業者と農水省は完全にグルだ。そして、まだまだ、とんでもない不正を隠そうとしている。
 まず、三笠フーズ事故米を工業用糊の原料として購入、食用転売していたが、工業用糊の原料は主に小麦粉やコーンスターチ、色がついたカドミ米で、普通の米はあまり使わない。工業用糊として、事故米を売ること自体、怪しげなのだ。
 しかも、三笠は糊原料の事故米を1キロ5円で仕入れ、食用に140〜240円で売ったとされる。こんなボロ儲けができるなら、どの業者も参入したいが、入札には工業用糊業者である資格がいる。結果的に三笠フーズは随契でボロ儲けのコメを仕入れ、荒稼ぎしたのである。
 18日に参院で開かれた農水委員会では高橋千秋参院議員が「大阪ではなぜ、三笠があんなに事故米を買えたのかという声が多い。表現は良くないが(農水省と)べたべたの関係だったのだろう。これは国家的詐欺だ」と切り込んでいたが、本当だ。
「そのうえ、農政事務所の立ち入り調査は事前通告し、帳簿や銀行通帳のチェック、仕入れと出荷の数合わせもやらなかった。農水省は保管にコストがかかる事故米を早く処分したい。三笠フーズは買ってくれるお客さん。売り手がお客のチェックをするわけがないのです」(福山哲郎参院議員)
 闇米業者と農水省の間には、昔から深いもたれあいの構図がある。ミニマムアクセスとして輸入させられた外国米を北朝鮮に売れば利権になる。汚染米を食用で流せば、濡れ手に粟で儲かる。そこから政治家へキックバックが行く。役人は見て見ぬフリをする。こうした構図だ。
 汚染米の広がりもこんなもんじゃないだろう。
三笠フーズが流した汚染米は1779トン。政府は流通した米の行き先をすべて確認しているというが、怪しいと思う。汚染されていない米に事故米を混ぜればわからない。悪徳業者なら考えそうなことです。事故米は全部で7500トンもある。巧妙な形で食用にばらまかれている可能性は捨て切れません」(米長晴信参院議員)
 太田は業界の闇の深さ、汚染の拡大に恐れをなして逃げ出したのではないか。食品偽装が大きな問題になって以降、マトモに農相を勤めあげた大臣は皆無だ。


日刊ゲンダイ 2008-09-20】