スイス『核の闇資料破壊』 米の圧力説浮上 米紙報道

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は25日、「核の闇市場」の鍵を握るとされるスイス人が米国のスパイだった、と報じた。米当局は、この人物からリビアやイランの核開発をめぐる重要な情報を得る一方、スイス当局の訴追からかばうため、スイス側に重要データの破壊を働きかけた疑いが浮上しており、闇市場解明の足かせとなっている。
 問題の人物はスイス東部に住むフリードリヒ・ティネル氏(71)。
 同紙によると、氏は真空技術の専門家で、30年来、パキスタンの核開発の中心人物カーン博士に協力し、博士が構築した闇市場にかかわった。米中央情報局(CIA)は2003年に同氏に接触。協力を取り付けた。既に同氏の息子も協力者にしており、一家には計1000万ドル(約11億円)が支払われたという。実際、同氏らからの情報をもとにリビアへの遠心分離機密輸を阻止。リビア核兵器計画放棄につながったとされる。
 しかし、同氏は04年、禁輸品取引の疑いでスイス当局に逮捕され、暗号データから小型核兵器の設計図が発見。弾道ミサイルに搭載可能で、イランや北朝鮮に流れた可能性もある。捜査上の重要な証拠にもかかわらず、07年にスイスは国際原子力機関IAEA)の立ち会いのもとにデータを破壊。核拡散防止条約(NPT)上の措置とされたが、証拠を失ったことで訴追は困難となった。
 同紙は、事件の扱いをめぐりスイス司法当局と米情報当局が協議していたとも報道。破壊されたデータには他のCIA協力者の情報も含まれていたとしている。
東京新聞 2008-08-26】