古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

岡庭昇、岡田英弘


 2冊読了。


戦後青春 食わず嫌いのスーパースター』岡庭昇/「食わず嫌いのスーパースター」とは創価学会名誉会長の池田大作氏のこと。左翼系文芸評論家による戦後論だ。ただ、池田大作に仮託して叙述されているため、物凄い変化球となっている。欲張り過ぎた試みのせいで、中途半端な感を否めない。また、左翼+文芸評論家の短所である「わかりにくい文章」も指摘せねばなるまい。更に、孫引きに寄り掛かっている印象も受けた。岡庭昇という作家は、角度をつけたテーマだといい文章を書いているんだけどね。


世界史の誕生岡田英弘/『〈狐〉が選んだ入門書』で紹介されていた一冊。「世界史はモンゴルから始まった」という主張に興味を掻き立てられた。これは凄い。凄過ぎる。「歴史という文化は、地中海世界と中国世界にしか存在しなかった」。そして、洋の東西を結びつけたのは、13世紀に中央ユーラシアを外へ外へと拡大し続けたモンゴル帝国だった。ここから世界史が始まるという論旨。日本にこれだけの学者が存在する事実に驚愕。大上段から降り下される知性の刃(やいば)に斬られることは、読者にとってこの上ない快感である。啓蒙の書といっておこう。