古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

品川裕香


 1冊読了。


心からのごめんなさいへ 一人ひとりの個性に合わせた教育を導入した少年院の挑戦品川裕香――タイトルと表紙で随分損をしていると思う。『発達障害を克服した宇治少年院』の方がまだいい。知人から薦められて読んだが、力のこもった作品である。少年院に収監される子供達の多くは、明らかに発達障害が見受けられた。当然、LD(学習障害)、ADHD注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー症候群の子供も含まれる。劣悪な環境で育ってきた子供達は、他人の痛みはおろか、自分の将来すら考えることができなかった。そのまま放置されていれば、間違いなく『累犯障害者』や『レッサーパンダ帽男』と同じ運命を辿ったことだろう。ところが、宇治少年院に一人の男が赴任することでガラリと変わる。向井義その人である。向井が発達障害に応じた教育法を取り入れたことで、見る見る子供達は変わっていった。30代の向井は真剣だった。向井が一人ひとりと面接をしただけで子供達は激変した。親に見捨てられ、教師に罵られた子供達が、初めて信頼できる大人と巡り会ったのだ。巻末では山下京子さんのコメントが紹介されており、見事な締め括り方となっている。