『完全図解 新しい介護』大田仁史、三好春樹

 ヘルパー2級講座の値段が、現在9万円前後である。実践的な側面から言えば、本書の方がはるかに価値がある。少々値が張るものの家族に身体障害者がいる方は必読。

すわることの九つの効用

1.食べやすい


 寝たままの姿勢での食事は食べにくいばかりか、誤嚥による肺炎のもとになります。少し前かがみになった状態が、いちばん食べ物を食べやすい姿勢です。

2.床ずれが治る


 いったん床ずれができてしまうと、なかなか治りにくいものです。日に何回もの体位交換をするよりも、すわることのほうがより効果がありますし、予防になります。

3.排便しやすい


 直腸内の便を押し出す腹圧は、「寝ている姿勢」より「すわっている姿勢」のほうが、大きくかかります。重力も活用できるので、便秘も解消されます。

4.筋肉が強くなる


 私たちが「筋肉」とよぶ骨格筋は骨にくっついてからだを動かします。すわると背中や首の筋肉に重力がかかって、姿勢を保つように収縮するので筋肉が強くなります。

5.バランスがよくなる


「すわる、立つ、歩く」ために大切な、からだの前後バランス、左右バランスが向上します。寝ているとその感覚が鈍ってしまい、低下するばかりです。

6.表情がよくなる


 表情は顔面の表情筋が収縮することで現れます。すわると筋肉に重力がかかり、それに抵抗して目が開いて口が閉じ、しまった顔になります。

7.血圧調整がよくなる


 私たちのからだは、姿勢を変えるたびに全身の血圧を調整しています。寝てばかりいるとこの機能が低下し、すわっただけでめまいを起こしてしまいます。

8.肺活量が増える


 寝ていると肺が圧迫され、はたらきが悪くなります。すわることで、肺の入っている胸郭が拡張するので肺活量が増えます。

9.手足の拘縮を予防する


 すわって重力がかかると、脳卒中で上肢が固まっていくのとは逆の力がかかります。また下肢の関節がすべて曲がるので、ピンと伸びる方向に固まるのを防いでくれます。

「寝たきり」の9割はすわれる


「寝たきり」は、ただ寝たきりにさせている「寝かせきり」だといわれます。ある特別養護老人ホームでは、ほぼ半数が「寝たきり」だと思われていましたが、原因は「寝かせきり」であることが実証されました。ほぼ90%以上の人が、すわって生活できるようになったのです。昼間はすわって皆といっしょに食堂で食事をし、グループ活動で他の人とふれあうようになりました。昼間を活動的に過ごすと食欲もわき、夜間もよく眠れるようになりました。