『カムイ伝』はマルクス主義歴史観をそのままマンガ化

永江●『「日本」とは何か』(網野善彦著)で一番面白かったのは百姓の問題。能登の古文書などを調べていくと、百姓=農民ではなかったことが明らかになっていく。これまで考えていたのとまったく違う百姓像が見えてくる。井上ひさし永六輔などリベラルな戦後民主主義者は、「コメこそが日本文化の根幹である」といいたがるけれど、それはぜんぜん違うんですね。


斎藤●リベラリストがかえって国粋主義だったりするのね。『海民と日本社会』(網野善彦著)という本は漁民とか貿易商とか海に依拠している人たちのことを描き出したもので、それはまさに百姓は農民ではないということを各地の文献できちんと示していて面白かった。いわれてみると「そうだったのか、そりゃそうだよな」という感じはしますね。


永江●「百姓は貧しい、虐げられた人々だったんだ」というのも幻想だった。『カムイ伝』(白戸三平著)は、そのパターンだった。貧しい百姓が悪代官に虐げられる。あれはマルクス主義歴史観をそのままマンガ化していた。60年代の史学とはああいうことだったんですね。百姓は豊かだったということに対して、左翼はどう答えるのか聞いてみたいな。


斎藤美奈子&永江朗の「甘い本 辛い本」1