高村薫

 今、ミステリーも純文学も含め、すべての作家が直面している最大の問題は、私たちが共有している言葉の数の減少だ。ある時期まで、小説にひとつの言葉を書けば、大方の日本人が言語空間を共有できた。21世紀には確実にそれが減っていく。世界を、人間を表す言葉が単純になる。小説の持っている可能性が小さくなるだろう。「さあ、どうするか」というところに現代の物書きは追いつめられている。


読売新聞 2005-12-13