古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

言い間違いを許さない社会


 いつからか、お笑いタレントがやたらと「噛むなよ!」と突っ込むようになった。他人の失敗を笑うことは決して珍しいことではない。失敗する様が幼児を連想させるためであろうか。ただ笑って終われば潤滑油として働くのだが、そこに別の感情が込められると、驚くほどの攻撃性が増す。嘲笑というやつだ。


 間違いを犯さぬ人間は存在しない。コンピュータは間違わないが、こちらの思いを忖度(そんたく)してくれない。逆説的になるが、人間は間違える分だけ成長するような気もする。


 東京の小学6年生が卒業式の直後に飛び降り自殺をした。式典で「大好きな学校」という部分を「大嫌いな」と言ったそうだ。新聞報道では「言い換え」となっているが、児童本人は校長に対して「緊張して間違えてしまった」と語っている。


 意図的であったにせよなかったにせよ、子供が自殺を選択せざるを得ないほど、我々の社会は狭量だ。


 間違いを赦(ゆる)してもらえば、人はその信頼に応えようとするものだ。