鳩山邦夫法相は13日、法務省で開かれた全国の高検、地検のトップが集まる検察長官会同で、鹿児島県議選をめぐる「志布志事件」の無罪判決に言及し「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではないと思う」と述べた。最高検は昨夏、同事件について捜査上の不備を認めている。無罪が確定した元被告らの「無実」に司法行政のトップが疑問を呈したとも受け取れ、批判が集まるのは必至だ。
鳩山法相は13日午前、会同でのあいさつで、「個人的な見解だが」と前置きして事件について言及。志布志事件は冤罪にはあたらない、との認識を示した。その上で「あのようなことが起きたのは誠に残念であり、十分な反省の上に立って、一層活発に、積極的に検察官としての活動をしてください」と述べた。
鳩山法相は同日午後、自らの発言の趣旨について「冤罪という言葉は、全く別の人を逮捕し、服役後に真犯人が現れるなど100パーセントぬれぎぬの場合を言い、それ以外の無罪事件にまで冤罪を適用すると、およそ無罪というのは全部冤罪になってしまうのではないか」と釈明。「踏み字など捜査上問題があり、被告とされた方々に大変なご迷惑をおかけしたという痛切な気持ちは持っている」と補足した。
鳩山法相は昨年9月、死刑執行について「自動的に客観的に進むような方法を考えたらどうか」と述べ、法相の署名なしでの死刑執行の検討に言及。同年10月には「友人の友人がアルカイダだ」と発言し、野党から罷免要求の声が出るなど、痛烈な批判を浴びた。
《志布志事件》2003年の鹿児島県議選で、買収行為があったとして公選法違反(買収)罪で、当選した県議や住民が逮捕、起訴された。鹿児島地裁は07年2月、「強圧的、誘導的な取り調べで自白が引き出された可能性がぬぐえない」として被告12人全員に無罪を言い渡し、鹿児島地検は控訴を断念した。これを受けて最高検は、捜査や公判の問題点について報告書を公表。「供述の信用性の吟味が不十分だった」と指摘した。
【東京新聞 2008-02-14】