二十歳(はたち)の時に買ったレコードがCD化された。既に四半世紀近くも経過していると思うと感慨が深い。
その頃、『ミュージック・マガジン』を愛読していて、ゼルダの小嶋さちほが絶賛していたのが、このアルバムだった。私には、理屈っぽい中村とうようのレビューよりも、威勢のよい小嶋さちほの文章が好みに合っていた。
以後、私の中でロックといえば、ルー・リードとE.D.P.Sが双璧となった。それ以外をロックと呼ばないことも可能なほどだ(笑)。
ロックが輸入された頃、当時の大人達は「気違い音楽」と蔑んだ。調和を奏でるのが音楽であれば、初めて耳にしたエレキギターの音が耳障りであることは、容易に想像できる。黒板に爪を立てた音と大差はなかったことだろう。
その後、ロックミュージックは変遷を辿り、ますます激しさを求めるハードロック〜サイケ〜パンク〜ヘヴィメタルという方向性と、クラシックなどの他ジャンルへの接近を試みるグループ(プログレッシブロック)と、ヴォーカル中心のポップロックに分かれていった。
ツネマツ(恒松正敏)率いるE.D.P.Sは、たった3枚のアルバムしか残さなかった。有名になることもなく、ひっそりとした存在だった。それでも彼等の音楽は燦然と輝きを放っている。
孤高の求道者が旅に旅を重ねて、一切の贅肉(ぜいにく)を削ぎ落とし、強靭な脚力と眼光が身に備わった――これが、E.D.P.Sの奏でる音楽だ。シンプルかつタイトでありながらも、力強さに満ちている。
二十数年を経ても尚、色褪せない音楽など、そうあるものではない。そこには、“魂”と呼ぶ他ない何かが脈動している。
“悟り”の域にまで到達したロックの名盤であると断言しておこう。
・「TO RULE THE NIGHT」E.D.P.S 【音声ファイル】
・『BLUE SPHINX』koutaro