中々いい作品だ。登場人物が次々とつながり、世界の仕組みを上手く解いている。誰もが、ふれあいたいと望みながらも、ぶつかり合う。小さな善悪が交錯しながら、それでも人は生きてゆかねばならない。傷つけ合い、助け合いながら。
作品のテーマを考えると、死人は出さない方が説得力を増したことだろう。
どこにでも転がっているような誤解や差別、先入観や偏見。監督が言いたかったのは、「イラク戦争も同じだよ」というメッセージか。
巧みなエピソードと人々の喜怒哀楽を盛り込みながらストーリーは進む。善人が悪人となり、悪人が善人へと変化を繰り返す。
物語のベース音を奏でるのは、「完全なるものへの否定」か。
惜しむらくは、全体の起承転結のアクセントが弱くなっているところ。
似たような内容で、異なるベクトルから描いたものに『ペイ・フォワード』がある。こちらは、ユートピア志向だが、物語性においてリードしている。
ただ、どちらの作品を見終えた後も、少しだけ親切な自分となっているところは共通している。
少女が、パパから「見えないマント」を譲り受けたエピソードは忘れ難い。