古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『24 TWENTY FOUR シーズンIV』


 やっと見終えた。レンタルビデオ店を駆け巡る羽目となった。


『シーズンI』を見終えた時、私は思った。「シリーズ化すれば、必ずマンネリになるだろう」と。予想は見事に外れた。いやはや、こりゃ凄い。新作が出る度に進化し続けている。私のつぶらな瞳は、完全に釘付けとなった。


『シーズンIV』はジャック・バウアーが、やたらとキスをする場面から始まる。「おいおい、こういう作風の変化かよ」と思わせるところがミソ。恋人は、いしだあゆみのような瓜実顔(うりざねがお)の女性。


 今回のテロリストの狙いは原子炉。コントロール不能にして、炉心の熔解を謀(はか)る。だが、それは第一段階に過ぎなかった。


 まあ、ストーリーはいいや(笑)。見てもらえば、わかるからね。今回見て、気づいたことをいくつか。


 まず、秀逸なキャラクター。パーマー元大統領は、『沈黙の艦隊』の艦長・海江田四郎を思わせるほどの賢人振り。目的のためなら手段を選ばぬジャック・バウアーのやり方は、果断に富んでいて小気味いい。まあ、この二人は主役だから、出来過ぎの感があるのは否めない。この他の、いわゆる嫌われ役みたいな登場人物が、それぞれ多彩な人間性を垣間見せる。キャラクターの多面性を描いてみせたところに、作品のレベルの高さが窺える。


 そして、今回のテーマは「家族」。人間にとって最も絆の強い関係が、揺さぶられ、翻弄される。いくつもの家族の様が描かれているところに注目されたい。


 テロの脅威をを通して描かれた人間ドラマ。細部のこだわりも素晴らしい。中国総領事側の責任者が、若い頃の胡耀邦によく似ている。


 このシリーズの最大の功績は、政治をドラマに仕立てたことだと私は思っている。


 終盤でストーリーは二転、三転する。人生は、予想できない方が面白いことを暗示しているようだ。孤独に耐えて戦いきったジャック・バウアーを、夕陽が照らすシーンは感動的だ。