三つの翻訳が出ている。
・『300人委員会 「世界人間牧場計画」の準備はととのった!!』太田龍訳(KKベストセラーズ)
・『三百人委員会 陰謀家たちの権力構造 新世界秩序は人類奴隷化計画だった』島講一訳(雷韻出版:絶版)
太田龍の訳が一番読みやすい。失敗した。
副題が仰々しくて、いわゆるトンデモ本と思う向きも多いことだろう。だが、内容はしっかりしている。著者は元々、英国諜報部のエリート。自分が知り得た情報に我慢ならず、告発に踏み切った。
ただ、この手の本を読んで困惑するのは、我々読者に確認のしようがないためだ。「世界が300人で牛耳られていると言われたってねえ……」というのが本音(笑)。鵜呑みにするか、笑い飛ばすか、二つに一つの選択を迫られる。
300人委員会のメンバーは、イギリス王室、フリーメーソン、ローマクラブ、他多数。モサド(イスラエル対外情報機関)もCIAもその傘下。IMF(国際通貨基金)やアメリカン・エキスプレスも下部組織。彼等は、アメリカを操り、テロリストを意のままに動かして、意図的な混乱を起こす。一国の経済を不況に追いやることなどわけもない。阿片の供給をコントロールし、若者にドラッグを吸引させるために、ビートルズを世に送り出す。イギリス東インド会社は、300人委員会の前身である「300人評議会」が管理していた。ジョン・F・ケネディを大統領したのも彼等であり、抹殺したのも彼等であった。ウォーターゲート事件も、キング牧師暗殺も同様。
彼等に逆らえば、必ず恐ろしい報復が待っている。ノリエガ将軍がパナマからドラッグを締め出そうとした。アメリカのブッシュ大統領(元大統領の父親)は、ノリエガを「ドラッグの売人」に仕立て上げた。その結果、7000人のパナマが殺戮されたが、まともな証拠は一つも見つからなかった。ノリエガは不当に拘束され、アメリカでインチキ裁判にかけられた。
どのページを開いても、こんな話ばっかりだ。
ジョン・コールマンの情報は、ややもすれば断片的になりがちだ。300人委員会が存在するならば、そこには彼等にとっての崇高な目的があるはずだ。
世界は空恐ろしい力によって動いている。オーウェルが『一九八四年』(ハヤカワ文庫)で描いた世界に向かって着々と進んでいる。
読み終えてから、私の頭に一つの疑念が湧いた。「ジョン・コールマン自身が、300人委員会のメンバーだったら、お手上げだ」(笑)。
そして今、国際的なニュースを目にする度に、「300人委員会」と思(おぼ)しき名前が山ほど出てくる。しっかり勘定すれば、多分、3万人以上になることだろう。