古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

中年は奥多摩湖を目指す

 青年は荒野を目指し、中年の私は奥多摩湖を目指す。もちろん自転車でだ。日曜日に三度目の挑戦をしたが記録は吉川英治記念館止まりだった。片道2時間。帰る道すがらシュークリームを食べるのが常となっている。どこをどう通ったところでアップダウンは避けられず、帰路につくと体内のエネルギーがなくなっていることを実感させられる。


 攻略するには敵のことをよく知っておく必要がある。そこで昨日、車にて奥多摩湖の偵察に行ってきた(笑)。いやはや遠い遠い。50kmぐらいあるよ。我が家から新宿までの距離と変わらない。初めて見た奥多摩湖はでかかった。でか過ぎて全景が見えないほどだ。その上妖しげな緑色の水を湛えていた。よくもこんな山奥に湖があったものだと思ったら、小河内ダムに堰き止められた人造湖だったのね。


 私は奥多摩湖を一周して戻ってくるコースを目標にしていたが、それがどれほど無謀な計画であったかを思い知らされた。軽く100kmを超えていたのだ。今後3ヶ年計画で制覇する予定。


 この界隈の見所をいくつか――


 まず、ここだ。青梅街道を奥多摩湖に向かって手前を左折。奥多摩都民の森に向かう途中だ。左手に看板が出てきて右カーブに差し掛かる位置。ここで「星の雫」が見れる。これは私が勝手に命名した(笑)。苔むした土手から湧き水の水滴が星屑のように伝っている。あこぎな真似をして買われた宝石の、数千倍の美しさだ。


 そして奥多摩湖をぐるりと回り、檜原街道を進むと檜原町役場の傍に、「払沢(ほっさわ)の滝」がある。この辺りは滝のメッカで、地図を見ると10本以上の滝があるようだ。東京都内にこんな場所があることに驚かされた。


 ここから見える川の景色も素晴らしい。遥か眼下をうねるようにして川が流れている。秋になれば絵のような光景が繰り広げられることだろう。


 これからも私は自転車を駆り、歩(ほ)を伸ばし、いつの日か“奥多摩の主”と呼ばれることを希望している。