古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

引きこもりをエンタテイメント化するテレビ局

 長田百合子というオバサンがテレビによく出ている。ニュース番組の特集で取り上げられることも多い。


 我が子の引きこもりに悩む親からは、結構な支持があるようだ。親と何度かやり取りし、直接、子供の所へ乗り込んでくる。大半のパターンは、「子供をここに連れて来ぃ」と言い、親がそれに従う。ここからドラマが始まる。


 今まで心安らかに引きこもっていたのに、突然、親が侵入してきて、子供は慌てふためく。胎児みたいな格好をする者や、動物的な奇声を発するのもいる。で、無理矢理、熱血オバサンの前に座らせる。オバサンは、親と子を向き合わせ、心の内を吐き出させる。子供の髪の毛をつかんで引きずり回したり、殴る蹴るの暴行が加えられることが多い。隣で見ているオバサンは、ちょっとした変化を見計らって、「おんどりゃあー」と叫び、名古屋弁丸出しのヤンキーと化す。


 私は堪(こら)え切れずに笑い声を上げる。他人にけしかけられて手を上げる父親、指示されてから、泣いて怒鳴る母親。私は、「そんなお前さん達に育てられたから、子供は引きこもったんだろうよ」と呟(つぶや)き、「俺も、こういう家に生まれたかったよ」と羨む。


 もしも、私が引きこもりになっていたら、二日目の朝に親父が登場し、私はサンドバックと化すことだろう。あんなオバサンが来るようなことがあれば、身体に障害が残るほど痛めつけられるに違いない。引きこもる場所がある子供は、全くもって幸せだ。


 子供なんて放っておいたって育つのが普通だろう。それを必要以上に干渉し、ベッタリと寄り添い、手取り足取り何でもやってあげ、何から何まで口を挟む。そんなことをしていれば、子供の自我が混乱するのは当たり前だ。


 まあ、引きこもりったって、色んな種類があるのだろう。だが、いずれにせよ、愚かな親によって、子供が被害を受けているのは確かだ。なかんずく母親が問題だ。


 我が子が社会に迷惑をかけるようなことがあれば、子供を殺して自分も死ぬ。これが母親の愛情の深さだろう。


 子供を他人の手に委(ゆだ)ねた馬鹿親は必ずこう言う。「もっと、早く何とかしてやりたかった。でも、あの頃は、本当にどうしていいのかわからなかった」と。もうね、笑いが止まらないよ。生きる信念もなく、胸襟を開く勇気すらない父親じゃ、どうしようもない。


 親が親の役目を果たせなくなった時、子供は子供ではなくなった。捨て犬ほどの元気すら持てない子供達が気の毒だ。