古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

古舘伊知郎を解く

 久米宏の降板を受けて、同時間枠に古舘伊知郎が起用された。


 テレビ界における久米の仕事振りを評価する声は数多い。だが、私は大嫌いだ。確かに、ニュース番組をお茶の間レベルにしたのは功績といえよう。そして、必要以上にニュースを貶(おとし)めたのも久米ではなかったか。


 久米の売りは、軽妙洒脱な語り口にある。年齢の割には、嫌らしさもなく、時にチャーミングな印象すら受けた。その罪の無いあどけなさを武器にしながら、コマーシャルが入る寸前に、わかりやすい揶揄をもって政治的メッセージを盛り込んでいた。久米の正体は、“小市民的アジテーター”というのが私の見方だ。


 その久米が降板になるというので、「やれやれ」と思いながらも、次のアナウンサーに少しばかり期待を募らせていた。


 で、古舘伊知郎である。古舘には、放送作家が4人、スタイリスト、ヘアメークが1人ずつ、担当マネジャーが2人、広報が1人、付き人が2人の総勢11人が付いているらしい。大名行列だわな。


 時折、ゲストに対して見せる傲岸不遜な態度は、こうした背景によるものかも知れぬ。「ワールドプロレスリング」の実況中継で、四文字熟語とカタカナ語を連発し、脚光を浴びたアナウンサーは、どことなく老獪に見えた。


 テレビというのは、絵で見せるものだから、タレント同士の力関係などが、一瞬でわかる。ジャニーズ系の小僧どもの増長振りなんぞは目に余るものがある。


 私は、古舘がそれなりの力を持っているのかと思った。しかし、他の番組の司会内容とは、明らかな相違が見てとれた。そこで、私はハタと気づいた。


 多分、古舘はテレビ局が書いた台本通りに仕事をしているだけなのだろう。メディア界の忠犬ハチ公といってよし。古舘は、所詮、ボキャブラリーが豊富なだけのサラリーマンだ。だから、溜まりに溜まった鬱憤を、「トーキングブルース」で晴らしているに違いない。


 久米は小生意気だが、古舘はどこか悲しい。