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ズームアップWEEKLY/カブール 「寒い教室 学ぶ心熱く」


【読売新聞夕刊 2002-01-31】


▼写真記事である。左に紙面の半分もある大きさの写真。まだ朝早い時間なのであろうか、少女が暖房の無い教室で白い息を吐きながら教科書に見入っている。少女の横顔と教科書に朝日が降り注いでいる。中世の宗教画を思わせるほどの神々しさだ。静謐(せいひつ)と緊張。少女の向学心と集中力を妨げるものは何一つない。貧しくても、失った物がどれほどあろうとも、平和を存分に享受する人間がここにいる▼そして右上には、開門と同時に椅子を確保するために教室へ走る生徒が映っている。椅子を逃してしまうと一日中立ったまま授業を受ける羽目となるから大変だ。しかし、飽食の国にあるデパートの年末セールなどとは、まるで異なっている。カブールの大地を蹴り、跳び上がる肉体の上には、笑顔が輝いているのだ。椅子を確保することすら楽しくてしようがないという顔つきだ。余りにも眩しい彼等の笑顔が、世界のあるべき姿を示してくれる▼その下には、廊下で授業を受ける生徒たち。教室が足りず、身体を寄せ合い、縮こまって、耳をそばだてている。ああ、どうして君達はそうまでして、学ぼうとするのだろうか。学ばずにはいられない衝動は、砂漠に突如として現れた涌き水のようだ。そんな君達から、私の方こそ学びたい▼平和の種はスクスクと育っている。この子等の人生に二度と戦禍が及びませんように。この子等が世界を平和にしゆく立派なリーダーと育っていきますように。