何を隠そうくらもちふさこのファンである。それも高校生の時からだ。別冊マーガレットに連載されていた『いろはにこんぺいと』を読んで、見事にはまってしまった。本書はその続編で、中学生になった「クンちゃん」が主人公。達(とおる)とチャコは脇役だ。
少女から乙女へと変化する季節に揺れる心。何気ない日常の中の、行き違いと自己嫌悪、そして優しさ。蟹座生まれはね、こういうストーリーに弱いのだよ。古本チームで野球の練習をして、くたくたであったが、寝床で3回読んだ。3度とも同じところで涙が出た。37歳にもなって少女漫画を読んで、枕を濡らす男は、そんじょそこいらにはいないぜ。
くらもち作品はキャラクターの秀逸さもさることながら、多彩なカットを映画のように効果的に描き出すところがミソ。「おやじ」が煙草を吸うシーンは忘れ難い。あとはあれだね、手と涙の描き方が上手いね。
クンちゃんが心に秘めた悩みをチャコがすくい取る。その優しさがクンちゃんの心を開かせる。何遍、読んでも、いいものは、やはりいい。