古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

買い求められた健康と非行


 独身男性の多くはコンビニエンス・ストアから随分と恩恵を被っていることだろう。私もその例外ではない。先日、颯爽と弁当を買いに行った際のことである。私の後ろに並んだ学生服姿の高校生が、牛乳をレジスターの傍らに置くなり「あと、マイルド・セヴン一個」と言った。私は真正面から睨(にら)みつけておいて、横っ面を張り飛ばした場合にどの程度の教育的効果が認められるか思案した。瞬時にして弾き出された答えは「無効」――などとやっていたら、ベテラン店員がどこ吹く風といった感じで「あ、内ね、学生さんには煙草売れないんだよね」。偉い! 私は感心した。煙草の販売を拒否したことはもちろんだが、一番、感心したのは、その言い方だった。決して威圧的になることなく、かといってオドオドしてる風でもない。妙に洗練されたスマートさが光っていた。


 愚かな高校生は健康と非行を買い求め一方が入手できなかったことから、やっていいことと悪いことが世の中にあることを学んだであろうか? あの馬鹿面じゃ無理かも知れない。せめて彼の体内にカルシウムが速やかに吸収されることを祈ろう。