2000-06-02 『笑って済ます噂噺大事典 楽屋の王様』高田文夫 抜き書き 私が大好きだった春風亭柳朝師匠が亡くなった。江戸前でいなせな噺家だった。若い頃から噂噺、ホラ噺が好きで、誰彼かまわずつかまえては大ボラを吹いていた。それが楽しい師匠だった。「柳朝師匠がまた吹いてさ……」があいさつ代りだった。弟子一同がひつぎを持った。出棺である。その時ものすごい突風が吹いた。春一番のようである。弟子の小朝がひと言つぶやいた。「柳朝、最後のひと吹き」。いい噺(はなし)である。