「一人ならじ」山本周五郎

「戦場では幾千百人となく討死(うちじに)をする、誰がどう戦ったか、戦いぶりが善かったか悪かったか、そういう評判は必ずおこるものだ、わたくし一人ではない、なかにはそういう評判にものぼらず、その名はもとより骨も残さず死ぬ者さえある、そしてもののふの壮烈さはそこにあるのだ」


 戦(いくさ)は勝つことが目的だ。そのために、毀誉褒貶(きよほうへん)を斥(しりぞ)け、功名心を捨て、戦場に散ってゆく命の数々。その潔さに武士の魂がある。


 口先だけの自己主張は浅ましいものだ。中には、営業マンさながらに、自分を飾ろうとする人物も多い。こうした連中が目指しているのは、“自分の評判を高める”ことだ。実際はどうあれ、評判さえよければいいのだ。


 テレビに出てくるタレントみたいに、上がったり下がったりする評判に一喜一憂するのは愚かな生き方だ。誰が見てようが、見てまいが、自分だけは真実を知っている。せめて、自分自身が納得できるだけの人生を送りたいものだ。


 2005-12-27