古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄、大野一雄舞踏研究所編(フィルムアート社、1997年)



大野一雄―稽古の言葉

 魂が先なのか、肉体が先なのか。肉体と魂がひとつになって、ということは、魂を自分に向けて、こっちに伝わってこないと。保土ケ谷の稽古場で語られた未公開テープから集めた舞踏のアフォリズム154章。

未払い賃金、計13億8000万円支払い わらべや日洋


 全国各地で告発の狼煙(のろし)を上げるべきだ。

 食品メーカー大手のわらべや日洋は7日、グループ会社の社員とパート合わせて約1万2000人に対し、約2年5カ月分の賃金の未払いがあったとして約13億8000万円を支払うと発表した。同社はコンビニエンスストア最大手のセブン−イレブン向けに弁当などを製造している。
 東京の立川労働基準監督署から昨年10月、賃金を支払う際に勤務時間の一部を切り捨てているとして、労働基準法違反で是正勧告を受けていた。これまで支払わず、今回支払いに応じた額は異例の大きさになる。
 労働時間は1分単位で計算しなければならないのに、社員は30分未満、パートは15分未満の労働時間を切り捨てて計算していた。労基署の勧告を受けて、わらべや日洋が時効が成立していない08年10月以降を調べたところ、約1万2000人に対し、1人あたり平均約10万円の未払いが見つかったという。
 同社は陶新二会長が報酬の30%を1カ月分返納するなど、役員ら12人を社内処分したという。同社は「法律違反の認識はなかった。従業員に迷惑をかけ申し訳ない」としている。


asahi.com 2011-01-07

日本子ども虐待防止学会第16回くまもと大会テーマ曲「冬、未来へ」歌:福嶋由記、作詞:内田良介、作曲:上村宏樹


 とにかくこの歌を聴いてくれ。俺は泣いた。

 それはきみのせいじゃない
 夢を描けないとしても
 最初見たはずの光
 喉の渇きと飢え
 遠い愛の砂漠で
 刃物のような言葉に
 いつも血を流しながら
 恐怖と怒りと不安の中で
 きみは生きてきたのだから
 そのままでいてかまわない


 それはきみのせいじゃない
 優しくなれないとしても
 通り過ぎる他人(ひと)しか
 信じられなくとも
 冬の王子のように
 凍った傷を抱いて眠る
 私たちは忘れない
 この世界に生きていたはずの
 過ぎ去った未来のことを
 消え去った希み(のぞみ)のことを


 父や母のせいだけじゃない
 乏しい孤立の鎖に
 さよならをするために
 手を差し伸べ合おう
 きみの笑顔のために
 つなげられた愛がある
 それぞれの違う場所で
 ひとつの命を支えている
 空や風や海のように
 懐かしい言葉のように


テーマ曲、誕生のいきさつ

極限状況を乗り越えた人々から学ぶ

 この本は、非常に厳しい人生の危機を乗り越える方法について書いたものだ。
 愛する人が亡くなったとき、結婚が破局に陥ったとき、仕事が挫折したとき、病気に襲われたとき、命の支えがなくなったときに体験するストレスに私たちはどのように打ち克ち、生きていくことができるのかを書いている。また、身体に障害が残るような大事故、強姦、生命を脅かす病気のような、個人的不幸に耐えぬいた人たちについても触れてある。さらに――人質や戦争捕虜といった――捕らわれの身となって、言葉に言いつくせないほどの心の傷を負いながらも、勝利を勝ちとった人々にも触れる。
 彼らの体験を知ることで、私たちは自分自身の逆境に打ち負かされることなく、人生を勝利に導く方法を学ぶことができるのだ。
 この本の中で取りあげた人たちの体験は、私たちとは無縁のもののように思われるかもしれない。たとえば、私たちの多くは強姦されることもないし、捕らわれの身となることもない。
 しかし、私たちにはそれぞれ、自分の個人的な能力の限界に挑戦しなくてはならない試練に直面する時期がある。人によっては、病気や経済的な苦境であるかもしれない。ある人にとっては、家庭の不和、子どもの非行、肉親の死、といったことにまつわる苦悩であることもある。また愛情、仕事、幸福といったものを失うことに関連した心の苦痛である場合もあるだろう。
 危機に直面したり心の傷を負ったりする状況は、現実に人生で起こってくるものである。私たちは、極限状況に挑戦し、勝利をおさめた人たちから、そうしたときどうすればよいのかの貴重な教訓を学びとることができるはずだ。
 ここで取りあげているのは、破局的な状況を生き延びるという現実的なことがらについてであり、日常生活の中で少しだけ気にかかるといった程度のことにどのように対処するか、ということではない。
 この本から、仕事が手に負えなくなったとき、財布を置き忘れたとき、車が動かなくなったときなどに使えるリラックス法――呼吸法、マントラヒンズー教や仏教で用いられる神秘的な言葉で、力をもたらすと信じられている)、瞑想、バイオ・フィードバック(自律神経系の反応を視覚的に把握することによって心理状態の安定をはかる方法)――について学ぶことはできない。
 リラックスしてくつろぎ、筋肉の緊張からくる頭痛を取り除く方法については、すでに多くの助言がなされているが、これは、そうした類の本ではない。強く生きることを述べた本であり、無難に生きるための方法を取りあげたものではない。
 この本を書くにあたって、私自身の研究の一部を引用した。それは、明らかにもっとも苦痛に満ちた人生体験のひとつ、捕らわれの身になる、という厳しい試練を体験した人に関するものである。
 1954年、私は、朝鮮戦争において「洗脳」を受けて帰還した3000人以上におよぶ戦争捕虜を対象とした米国空軍の公式研究分析に携わった。それから12年後には、海軍の精神科医および心理学者からなる小グループに参加した。ベトナムで捕虜になるという、信じられない悪夢を生き延びた550人の男性に対して行なわれた同じような研究分析の補佐を頼まれたからである。最近では、イランに14か月監禁されて解放された52人の人質を助けるという仕事に、国務省の特別調査委員会の一員として参加した。また、第二次世界大戦以来数十年にわたって、強制収容所で生き延びた人たちに関する研究にも携わってきている。これは、ナチのガス室を逃れ、米国、ヨーロッパ、イスラエルで新しい人生、新しい家庭を築き上げた人たちに関する研究である。
 この本は、あまり多くの人の目につくことのない苦しみを体験しながらも、それを乗り越えて勝利を勝ちとった人たちに関する研究結果についても触れてある。癌にかかった子どもの親、強姦や暴行にあった人たち、身体に障害が残るような事故にあったり死に至るような病気にかかった人たちなどである。
 また、私自身が亡命者に関する研究を通して経験したことについても記載した。これは、慣れ親しんだ土地から離れなくてはならず、馴染みのない新しい世界の中に漂いながらもそうした状況を克服していった人たちである。
 そして、最後に、私自身が個人的に遭遇した出来事――重病、家族の死、差し迫る仕事上の危機――についても触れておいた。
 こうしたことを取りあげはしたが、この本はけっして暗いものではない。苦痛や喪失体験について述べているが、主題は、励ましであり希望である。
 なぜならば、私たちが現実に、いかに素晴らしい回復力を持ち、適応力があるかということを述べているからである。
 この本を通して、読者の皆さんは、人間が信じられないほど強い耐性を持っているということを示す事例に出会うことになると思う。苦しみを乗り越え、勝利を獲得した人たちの人生から得られる教訓を用いることによって、どのようにすれば人生で必ず出会う危機的状況に対応でき、しかもそれを乗り越えることができるのか、がわかってくるはずだ。
 この本を出版するにあたっては、パトリシア・バン・A・カインド、ウィリアム・T・グラント財団、モーリス・フォーク医学基金の経済的援助を受けた。また、カインド夫人、ロバート・J・ハガティ医学博士、フィリップ・B・ハレンの、寛大な励ましと助力に対して深く感謝の意を表したい。(「まえがき」)


【『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル小此木啓吾〈おこのぎ・けいご〉訳(フォー・ユー、1987年)】


生きぬく力―逆境と試練を乗り越えた勝利者たち

スティーヴン・ホーキングが生まれた日


 今日はスティーヴン・ホーキングが生まれた日(1942年)。車椅子の物理学者。一般相対性理論が破綻する特異点定理ロジャー・ペンローズと共に発表。量子重力論を提示し、その帰結として量子効果によってブラックホールから粒子が逃げ出すというホーキング放射の存在が予測されている。


ホーキング、宇宙と人間を語る ホーキング、宇宙のすべてを語る ホーキング、未来を語る (SB文庫) 宇宙への秘密の鍵