古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

アントニオ・R・ダマシオ


 1冊読了。


 135冊目『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』アントニオ・R・ダマシオ/田中三彦訳(ちくま学芸文庫、2010年/『生存する脳 心と脳と身体の神秘』改題、講談社、2000年)/テンプル・グランディン著『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』で紹介されていた一冊。フィネアス・ゲージの詳細から始まり、前頭前野を損傷した患者、病徴不覚症患者などを通して、情動・感情の重要性を説いている。そして、推論−意思決定は身体に支えられているとする「ソマティック・マーカー仮説」を立て、デカルト心身二元論をコテンパンにしている。ま、心を脳に閉じこめなさんな、といった主張だ。面白かった。ただ後半が苦しい。翻訳の問題というよりは、ダマシオ自身の考えが決定的な深みに達していないように感じた。『動物感覚』を読んだ人は必読。

自分自身の草の根体験は改革への説得力をつける

 貴重な学習をさせてもらった日々であった。特に、貧村やスラムの視察より家族の一員としてホームステイをするのが好きだった。貧民の生活など知ろうともしない為政者を圧倒する目線や情報が、手に入るからだ。もちろん、政治の最前線だから、喧嘩の種は拾いきれないほどある。自分自身の草の根体験は、改革への説得力をつける。貧しさに喘ぐ株主、すなわち「我が家族と大勢の親類縁者」に励まされるから、権力者との闘いに尻込みをする暇などなかった。
 悪政が日常茶飯事な発展途上国の草の根で、稀に、世銀と同じ夢を一心に追うリーダーに出会うと、無上に嬉しくてよく泣いた。話や形は変わっても、皆それぞれのナディアを胸に抱いていた。ナディアが「正しいことを正しく行う」情熱を煽ぎ、情熱が信念の糧となり、ハートが頭と行動に繋がっていた。心身一体、常に一貫した言動だからこそ、民衆の信頼を受け、人々を鼓舞し、奮起していた。


【『国をつくるという仕事』西水美恵子〈にしみず・みえこ〉(英治出版、2009年)】


国をつくるという仕事

とりつかれたり、狂ったりするのは3年

 小池が本格的に将棋の勉強をしたというのは高校入学の年からで、このときは猛勉強したというより、将棋に狂っていたと小池は私に語ったことがある。
「どんな分野でもそうだと思うのですがとりつかれたり、狂ったりするのは3年ぐらいがいいところじゃないですか。あとは惰性で勉強して充分だと思うんです」
 といったこともあった。将棋の勉強のさまたげになると感じて学校の教科書は読まないことにした、というのだからたしかに将棋に狂った高校生であった。


【『真剣師 小池重明 “新宿の殺し屋”と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯』団鬼六〈だん・おにろく〉(イースト・プレス、1995年/幻冬舎アウトロー文庫、1997年)】


真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

フジ子・ヘミングが生まれた日


 今日はフジ子・ヘミングが生まれた日(1932年)。「苦しかったことは、時が流れれば黄金色に輝くわよ」「すべてが、揃っていないと幸せでないと思うようになったら、それはとても不幸なことよね」「間違えたっていいじゃない、機械じゃないんだから」「どんなに教養があって立派な人でも、心に傷がない人には魅力がない。他人の痛みというものがわからないから」「死にものぐるいになったら、なんでもできる。そのかわり一生懸命にならないと実現できないわよ。情熱の一部なんかでは絶対にできない、ということを肝に銘じることだわ」「人間は場所を得て初めて、本当の姿を現す生きものなのよ」




奇蹟のカンパネラ フジ子・ヘミングの奇蹟~リスト&ショパン名演集~ 憂愁のノクターン(K2HD)


フジ子・ヘミング 運命の力 フジ子・ヘミングの「魂のことば」 天使への扉 (知恵の森文庫) フジコ・ヘミング 魂のピアニスト (新潮文庫)

ヴェルナー・ハイゼンベルクが生まれた日


 今日はヴェルナー・ハイゼンベルクが生まれた日(1901年)。行列力学不確定性原理によって量子力学に絶大な貢献をした。1932年に31歳の若さでノーベル物理学賞を受賞。タゴールに東洋哲学を学び、その内容が量子力学の真髄に通じていることを知り、驚いたとされる。


部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話 そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命 ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか 物理学に生きて―巨人たちが語る思索のあゆみ (ちくま学芸文庫)