古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

大乗仏教運動の担い手は革新的な出家僧だった

 以前は、大乗仏教は、複雑きわまるスコラ的論争に熱中して、人々の救済をほったらかしにした僧院中心の仏教に愛想をつかした在家の信者たちが起こした運動からはじまったという説があったが、現在では否定されている。いわゆる大乗仏教運動は、僧院の中の革新的な出家僧が主な担い手だったらしい。
 後期仏教は7世紀から13世紀はじめにあたり、密教が興隆した時期にほかならない。ただし、この時期になると、5世紀ごろから勢力を増したヒンドゥー教の攻勢に圧倒されて、仏教は明らかに衰退気味になっていた。密教が登場してきた理由も、ヒンドゥー教の攻勢に対する仏教なりの反応あるいは対抗策だった面がいなめない。さらに、西方からやってきたイスラム教の勢力から攻撃されて、後期仏教の時代は苦難の連続と化した。
 結局、13世紀の初頭、インド仏教は、ヒンドゥー教イスラム教に挟み撃ちにされるかたちで、滅亡した。具体的には、密教を中心に仏教勢力にとって最後にして最大の拠点となっていた東インドのヴィクラマシーラ大僧院がイスラム勢力に焼き討ちされて、インド仏教は滅び去ったのである。


【『マンダラとは何か』正木晃(NHKブックス、2007年)】


マンダラとは何か (NHKブックス 1090)

定見のない日本人

 昨日まで「一億玉砕」を叫んでいたのに、一朝にして「一億総懺悔」を訴えたり、ごく最近まで中国の国連加入阻止に血道をあげていたのに、いつの間にやら国交回復のお先棒を担ごうとする精神は、これとはほど遠いだろう。


【『パラドックス 論理分析への招待』中村秀吉〈なかむら・ひできち〉(中公新書、1972年)】


パラドックス―論理分析への招待 (中公新書 (297))

マーガレット・ミッチェルが生まれた日


 今日はマーガレット・ミッチェルが生まれた日(1900年)。くるぶし骨折で療養中に初めて小説を執筆する。3年ほどで完成したが創作への意欲を失っていた。6年後、有望な作家を探していた編集者が訪れる。彼女は古くなった原稿用紙を渡した。身長を上回る量だった。これが『風と共に去りぬ』。



風と共に去りぬ (1) (新潮文庫) 風と共に去りぬ (2) (新潮文庫)


風と共に去りぬ (3) (新潮文庫) 風と共に去りぬ (4) (新潮文庫) 風と共に去りぬ (5) (新潮文庫)