枢軸時代の変化

 ソクラテス孔子、イエス仏陀は、同じような時期に出生している。これは宗教史にとって重要な出来事である。ドイツの哲学者カール・ヤスパース(1883-1969)は、この4人が出た時代を「軸の時代」と名付けた。彼らの思想に共通していることは、個々の人間つまり自己を問題にすることだ。「軸の時代」までは、王が国を守るための儀式であるとか、人々がその社会を守るための律法であるとかが宗教の名において求められてきた。今のわれわれならば自己を問題にすることは当然ではないかと思う。しかし歴史の中においては、個人の精神の問題が考えられるのはそれほど古いことではない。古代エジプトの宗教、セムユダヤ人の宗教、古代日本における豪族たちの宗教などにあっては、王あるいは皇帝の死後の世界をどのように考えるかが主要問題となることはあっても、一般の人間が個体として浮かび上がることはなかった。


【『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵講談社学術文庫、2003年)】


空の思想史―原始仏教から日本近代へ (講談社学術文庫)