古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

文庫化『露の身ながら 往復書簡 いのちへの対話』多田富雄、柳澤桂子(集英社文庫、2008年)



露の身ながら―往復書簡 いのちへの対話 (集英社文庫)

 突然の脳梗塞で、声を失い右半身不随となった免疫学者・多田富雄と、原因不明の難病の末、安楽死を考えた遺伝学者・柳澤桂子。二人の生命科学者が闘病の中、科学の枠を越えて語り合う珠玉の書簡集。いのち・老い・病・家族・愛・科学・戦争・遺伝子・芸術・宗教・平和とは何なのか……。

『イエスは仏教徒だった? 大いなる仮説とその検証』エルマー・R・グルーバー、ホルガー・ケルステン/市川裕、小堀馨子監修・解説、岩坂彰訳



イエスは仏教徒だった?―大いなる仮説とその検証

 イエスは本来仏教徒であった。この大胆な仮説を、文献や考古学上の成果を駆使し、東西文化交流の長い歴史に遡って論証する試み。研究者7名による解説「イエス仏教徒説を検証する」を収録。

『私とマリオ・ジャコメッリ 「生」と「死」のあわいを見つめて』辺見庸



私とマリオ・ジャコメッリ―「生」と「死」のあわいを見つめて

 孤高の写真家をめぐり静かに深まりゆく作家の言葉−断想。NHK新日曜日美術館「私の愛する写真家」(08年5月25日放送)をもとにした詩的映像論。生と死の思索。マリオ・ジャコメッリの代表作の他、辺見庸未発表詩篇も収載。

主な目次


第一章 白は虚無、黒は傷跡
  スカンノの少年
  心と躰に刺青を彫りこまれる
 「想像への入口」としてのモノクローム
  あらかじめ詩人である男が見る異界

       
第二章 「時間」との永遠の戦い
 「時間の強制」からの離脱
  識閾から見る風景
  世界はそこに実在するのか
          

第三章 生に依存した死、死に依存した生
  死にゆく者の側から撮られた風景
 「死」とむきあう空間のにおい
 〈見ること〉と〈見られること〉
 「死ぬのもむずかしいのよ」


第四章 資本、メディア、そして意識
 「無意識」に入りこむ資本
  映像と資本の腐れ縁
  資本はジャコメッリさえもとりこむ
  倒錯した状況のなかで


第五章 解かれなければならない「謎」、解いてはならない「謎」 
  謎と自由
  表現者はいかにして資本と権力から自由でありえるか
  ジャコメッリという人間の手ごたえ
  帰結のむこうにはじまりがある