古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ウィニー開発者に逆転無罪 大阪高裁、著作権侵害ほう助認めず

 ファイル交換ソフトウィニー」を開発し、ゲームや映画ソフトの違法コピーを容易にしたとして、著作権法違反ほう助罪に問われた元東大助手、金子勇被告(39)の控訴審判決が8日、大阪高裁であった。小倉正三裁判長は「著作権を侵害する用途に利用される可能性を認識していただけでは、ほう助犯は成立しない」として罰金150万円とした一審・京都地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
 判決は、ソフトの利用者が著作物を違法にコピーした場合に、ソフト開発者を罪に問えるとした一審の判断を覆した。一審で懲役1年を求刑した検察側と、無罪を主張する弁護側の双方が控訴していた。


日本経済新聞 2009-10-08

記憶とは何か

 失われた時を求めて、というのではない。僕はそのかぎりにおいて、池田の町にいささかの感傷の覚えもなければ望郷の念もないのだ。照合すべき過去が見えないとき、幻想に心情を寄せることは詮ないし、幻影に向けてシャッターを切ることもできない。さらに、過去を現在に、現在を過去に重ね合わせて見ることが記憶を検証することではない。もとより記憶とは、自身の内部(なか)に懐かしく立ち現れる、かく在りきイメージの再現行為などではなく、現在(いま)を分水嶺として、はるか前後へと連なっていく大いなる時間に向けて、したたかにかかわっていく心の領域のことだと思うからである。


【『犬の記憶』森山大道〈もりやま・だいどう〉(朝日新聞社1984年/河出文庫、2001年)】


犬の記憶 (河出文庫)