古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ジョン・J・マーフィー


 1冊挫折。


 挫折11『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー/日本興業銀行国際資金部訳(きんざい、1990年)/300ページで一旦中止。ポイント・アンド・フィギュアで少々混乱したため。チャート分析の教科書。値は張るものの、テクニカルの基礎を学ぶにはこれ一冊で十分。消化不良を起こしているので、まずは前半部分をマスターするのが先決と判断した。

アンベードカルに対するガンディーの敵意/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

 不可触民はガンディーの欺瞞を知った。

 アンベードカルの要求に対するガンディーの敵意は、インド各地の不可触民に大きな衝撃をあたえずにはいなかった。
 全印被抑圧者会議で、ラオ・バハーズール・ラージャは、ガンディーは不可触民問題を正しく伝えておらず、会議派が初めから不可触民のために尽し、その大義を背負ってきたというガンディーの主張を激しく非難し、会議議長の名によって、ガンディーのそのような主張は“虚偽”であると明言した。
 同会議は、アンベードカルの提出した諸要求を支持し、被抑圧階級への分離選挙制度を認めない新統治は受け入れないと宣言した。インド各地で開かれた沢山の集会、会議、指導者、協会などから、ガンディーと会議派を信用するなというメッセージがアンベードカルの下に殺到した。この洪水のようなメッセージは、不可触民の代表が誰であるかを如実に物語っていた。


【『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール山際素男訳(三一書房、1983年)】


 ガンディーが不可触民に示したのは、上流カーストによるアウトカーストへの哀れみ程度だったのだろう。だが、インド独立という功績によって、ガンディーの欺瞞は歴史の影に葬られてしまった。


 その後、ガンディーは聖人と化した。批判することも許されない偶像となった。真実を知っているのは虐げられた不可触民だけであった。


社会を形成するために脳は大きくなった/『内なる目 意識の進化論』ニコラス・ハンフリー

 ヒトの脳は大きい。いや大き過ぎる。ではなぜ、身体の大きさに不釣合いなほど巨大な脳を必要としたのか。そこにどのような進化の必然があったのか――

 大型類人猿の生物学的な成功の鍵を握っているのは、明らかに社会的な知能である。こういった動物が、頭の中で物事を考え、記憶し、計算し、評価しなければならないのは、お互いどうしの付き合いにおいてである。そして社会的な知能は、彼らが手に入れた頭脳の最後の一滴までをも必要とするのである。


【『内なる目 意識の進化論』ニコラス・ハンフリー/垂水雄二〈たるみ・ゆうじ〉訳(紀伊國屋書店、1993年)】


 ゲンナリ。つまり、愛想を振りまき、おべっかを使い、ゴマをすり、他人の顔色を窺い……と社会のバランスを維持するために脳味噌はフル回転しているということか。


 まったく嫌な話であるが、確かに我々が普段考えていることの大半は「人間関係」にまつわることだ。単純化してしまえば、「何かしてくれた」「何もしてくれない」といった損得の次元であることが多い。


 しかも、だ。近代国家における教育は、勤労・真面目・協調性という価値観に支配されていて、国民を労働者か兵士――つまり現代の奴隷――に仕立て上げようと目論んでいる。そう。我々庶民は「国家の手足」だ。


 複雑な人間関係で悩むは多い。だが本質は違っていた。人間関係に悩むからこそ、脳が発達したのだ。そういや、「悩む」と「脳」の字は似ている。ヘンは「心」と「身体」の違いに過ぎない。そして「凶」の字が不安を掻き立てる。


 あ、わかった。「凶」という不安を予測できることが、人間の脳の最大の武器ってことね。武器というよりは凶器か(笑)。