そして、この本を読んでもわからない(笑)。デル・バンコ一族ってえのあ初耳。この連中が世界の金を牛耳っているんだってさ。ただし、著者の推測・推理に過ぎない。「凄いことを書いてやるぞ」と力み過ぎて、わけがわからなくなっている。孫引きも多過ぎる。マーケット以外で価格が決められていることが書かれているが、根拠が殆ど示されていない。その点において陰謀史観と大差ないと思われる。それでも、金は上がりそうな気がする。国際機軸通貨のドルが弱くなっているよーな感じ。通貨というのは約束事に過ぎず、所詮紙っぺらだ。資本主義経済が打撃を被ることがあれば、金は暴騰することだろう。そうかといって、金先物なんぞに手を出すのは早計だ。リスクの少ない純金積立あたりが好ましい。使う予定のない金がある人は、金を買っておいた方がお得だろう。
致命的な部分を一つだけ指摘しておこう。
BIS規制こそが日本のバブルをはじけさせた要因である、そう解説する経済書が多い。だが、銀行の自己資本率8%を定めたBIS規制ゆえに日本の銀行がおかしくなり、バブルがはじけたのではない。(150ページ)
と書いておきながら、終章ではこうだ。
私たちはBIS規制の恐ろしさを思い出さねばならない。バブルの崩壊はBIS規制によったと私は書いた。(228ページ)
書いてねーだろーが(笑)。ためになったところは以下――
〈金の戦争〉どころか、金そのものについて語ったり、書いたりする経済学者もいない。ケインズ、フリードマン、サミュエルソン、そしてガルブレイズにいたるまで一人もいない。未来学者も語らない。グローバリズムを否定するノーベル賞学者のスティグリッツも金に関しては沈黙を守っている。
だが、巻末近くで何とリチャード・コシミズという名前が出てきて、元も子もなくなっている。