書評:ミステリ

『静寂の叫び』ジェフリー・ディーヴァー

一日半で読み終えた。久方振りの読書は喜ばしいことに快感を伴うものとなった。ロバート・ラドラム亡き後、ジェフリー・ディーヴァーに掛ける期待は大きい。作風は異なるが、極限状況を克服するドラマが与える興奮は同じものだ。ディーヴァーの場合、人質や…

『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー

『ボーン・コレクター』 『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァー 『エンプティー・チェア』ジェフリー・ディーヴァー 『石の猿』ジェフリー・ディーヴァー 『魔術師(イリュージョニスト)』ジェフリー・ディーヴァー 『12番目のカード』ジェフリ…

『幻の特装本』ジョン・ダニング

圧倒的な人気を博した『死の蔵書』(早川文庫)の続編である。 読み終えて私は唸った。「ウ〜ン……」。それから「マンダム」と付け加えるべきか否か迷った。前作と比較するとスピード感に欠けるのだ。だが、作者を責めるわけにもゆくまい。出来は悪くないのだ…

『チャンス』ロバート・B・パーカー

『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー 『初秋』ロバート・B・パーカー 『チャンス』ロバート・B・パーカー] 『突然の災禍』ロバート・B・パーカー 『スクール・デイズ』ロバート・B・パーカー シリーズ物は“サザエさん化”を免れない。これが…

『てのひらの闇』藤原伊織

あなたの周囲には、信じるに足る人間が何人いるだろうか? 常に一緒にいても、ただ饒舌なだけで、深く交わろうともしない互いを「友達」と呼称する時代。表現する自己すら失った社会では、言葉は虚しい響きしか持たず、鳥のさえずりにも劣り、殺伐たる様相を…

『梟の拳』香納諒一

黒いマントを羽織った誰かが、いきなり俺の前に飛びおりたのはそのときだ。 チャンピオンの栄光をつかんだ主人公が、網膜剥離(もうまくはくり)で視力を奪われた瞬間をこのように表現する。思わずため息が出た。巧い。ところどころに挿入されるボクシングの…

『Cの福音』楡周平

大藪春彦の衣鉢(いはつ)を継ぐ作家、と言っていいだろう。デビュー作にしてこれだけ読ませる作品に仕上げた力量はお見事。今後、どう化けるかに期待。 「C」とはコカインを指す。主人公・朝倉恭介が両親を飛行機事故で失い、多額の賠償金が入ってくる。大…

『暗黒の河』ジェイムズ・グレイディ/池央耿訳

国際謀略モノである。ロバート・ラドラム、デイヴィッド・マレルの系譜に連なるかと思ったが少し勝手が違う。登場人物はそれぞれ訓練を受けてきた兵士たちなのだが“ランボー”や“ジェイソン・ボーン”みたいなスーパー・ヒーローは出て来ない。ベース音に流れ…

『A型の女』マイクル・Z・リューイン:石田善彦訳

全く酷いものだ。映画や書物につける邦訳タイトルの拙劣さは、これまでにも数多く指摘されてきたが、これなんぞもその最たるものだろう。更なる悲劇が文庫本の表紙を襲う。アメリカあたりの4コマ漫画から取ってきたような淡い色調のカットが、控えめに中央に…

記憶喪失の凄腕の正体やいかに? 国際謀略小説の巨編/『暗殺者』ロバート・ラドラム

記憶喪失の凄腕の正体やいかに? 国際謀略小説の巨編 『記憶喪失になったぼくが見た世界』坪倉優介 『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム 『メービウスの環』ロバート・ラドラム 国際謀略小説の雄、ロバート・ラドラムの屈指の傑作である。 二十歳(はたち…

『鷲は舞い降りた〔完全版〕』ジャック・ヒギンズ:菊池光〈きくち・みつ〉訳(ハヤカワノヴェルズ、1976年/ハヤカワ文庫、1981年/完全版、1992年)

冒険小説史上に燦たる不滅の傑作 13年前、失意の底から喘ぐような思いで東京行きを決心し、故郷の北海道を後にした。両手で間に合う荷物を携え、文字通りこの身ひとつで再起を賭けた旅立ちであった。23歳、厳寒の2月、吹雪荒れ狂う14日のことである。 わずか…

生きざまで語るタフな探偵/『初秋』ロバート・B・パーカー

『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー 生きざまで語るタフな探偵 喋るのをやめて、準備にとりかかるべき時だ 「名はスペンサーだ、サーの綴りは、詩人と同じようにSだ」 『チャンス』ロバート・B・パーカー 『突然の災禍』ロバート・B・パー…

『檻』北方謙三

和製ハードボイルドの黎明を告げる佳作 『檻』再読に値せず、と私は断ずるものだ。 この本が出た時、私は二十歳(はたち)だった。あの頃の興奮・熱・余韻……。日本のハードボイルドの夜明けが遂に到来したかと息を飲んだまま、ペ−ジを繰る手ももどかしく、本…